精神科領域ってなんか苦手意識が強い、、
こんな風に悩んでいる薬剤師はたくさんいるかもしれません。
僕は普段からInstagramで精神科領域の発信をしていて、多くの薬剤師の方から「精神科苦手です」と相談を受けることがあります。
その大きな理由に、精神科領域に多い適応外処方や投薬後にチェックする重大な副作用などが大きく関係していると考えています。
実際に僕が精神科で働き出した時もどうやって勉強していいか「???」の状態でした。
ですが精神科の知識は少しずつでも身につけることでとても面白い領域ですし、精神疾患を患っている方も最近は増加する一方ですのでおさえておいた方がいいと思っています。
そこで、本記事では精神科領域を得意にするためにどうやって勉強すればいいのかを解説しています。
現在精神科に関わりがない薬剤師の方でも、今後増えるであろう精神疾患の知識を今のうちに勉強しておきましょう。
結論:精神科の勉強をするときはこの流れでやってみよう
結論から解説します。
精神科の領域が苦手という人は、絶対にどこか勉強の順番をミスっている可能性が高いです。
勉強の順番を間違えているってどういうこと?
薬剤師に多いのですが、精神科の領域を勉強するときは薬剤の勉強からはじめると意外とややこしいことになります。
その理由としては精神科では添付文書通りに使わない適応外処方がたくさん出てきます。薬の勉強だけしていると、そういった適応外処方で間違いなく混乱してしまうと思います。
これが原因で「精神科の領域は苦手だ」と苦手意識を持ってしまう方が出てしまっているのも事実です。
そこで僕は精神科領域を勉強するときは次の流れで勉強するのをおすすめします!
まずはその疾患がなぜ起こっているのか?どういった神経伝達物質が変化しているのかをおさえましょう。
精神疾患の特徴をおさえてからはじめて薬の勉強をすると理解しやすいです。
理由は後ほど詳しく解説します。
最後に適応外処方をおさえましょう。適応外処方はガイドラインや書籍で勉強できます。
なぜこの順番なのか理由と勉強法を解説します!
1.精神疾患の原因や特徴をおさえる
まず初めに強くおすすめしたいのが、精神疾患は病態からおさえてください!
特におさえておきたい内容が以下の3つです。
- なぜその精神疾患が起こるのか?
- その疾患では神経伝達物質の変化はどうなるか?
- 主な症状はどんな症状になるのか?
具体的に例を挙げて紹介するよ♪
統合失調症を例にした場合
統合失調症を例にして説明すると、次のような情報をおさえておきましょう。
①統合失調症はなぜ起こるのか?
統合失調症は大きなストレスや遺伝が関係していると言われることもありますが、現在の医療ではメカニズムが分かっておらず正確な原因は分かっていません。
このことが統合失調症の薬をやめることができずに飲み続けないといけない理由でもあります。
(根治治療ではなく対症療法)
②その疾患では神経伝達物質の変化はどうなるか?
統合失調症は主にドパミン仮説で考えられることが多い。
- 中脳辺縁系ではドパミン過剰状態→陽性症状
- 中脳皮質系ではドパミン減少状態→陰性症状、認知機能障害
- 黒質線条系ではドパミン変化なしだが、抗精神病薬で遮断されると錐体外路症状
- 漏斗下垂体系でも変化なしだが、遮断されると高プロラクチン血症
③主な症状はどんな症状になるのか?
統合失調症の主な症状は陽性症状、陰性症状、認知障害に大別される。
陽性症状では幻覚や妄想などが、陰性症状では感情の平坦化や能動性の低下などの症状が起こる。
このような流れで精神疾患がなぜ起こるのか?神経伝達物質はどう変化するのかを抑えるようにしましょう。
2.薬の分類と特徴をおさえる
最初に精神疾患の病態を抑えることで薬の勉強も劇的に改善します。
先ほど解説した統合失調症を例にお話すると、まず統合失調症ではドパミン仮説が考えられていることが分かったかと思います。
ではこの病気を治療するにはどんな薬を使えばいいのか?病態から考えると、ドパミンの量を調節してくれる薬剤が使えそうな気がしますよね?
そこで勉強するのが抗精神病薬になってくるわけです!
順序立てると病態と薬剤がセットで理解しやすいですね。
もう少し薬の勉強法について解説します。
抗精神病薬の分類と勉強法
ドパミン量を調節する抗精神病薬を勉強するときの例を具体的に解説します。
現在、抗精神病薬の分類は以下のようになっています。
- 定型抗精神病薬(第一世代)
- SDA(セロトニン・ドパミンアンタゴニスト)
- MARTA(多元受容体作用抗精神病薬)
- DSS(ドパミン・システムスタビライザー)
※2〜4を非定型抗精神病薬と呼ぶことが多いです
1.定型抗精神病薬
定型抗精神病薬にはセレネースやヒルナミン、ドグマチールなどの薬剤がありますが、主な特徴はドパミンの遮断に特化していることです。
陽性症状が過剰な患者さんや非定型で効果がいまいちな方で使用されることが多いことでも分かりますが、効果も強く切れ味もしっかりしています。
ですがその反面、副作用に注意が必要な薬剤で中脳皮質系でのドパミン量減少により陰性症状が悪化したりする場合があります。
2.非定型抗精神病薬
非定型抗精神病薬には、SDAやMARTA、DSSなどの種類が存在します。
この薬剤は少しずつ作用は違いますが、主に定型抗精神病薬の弱点であったドパミンを遮断することで起こる副作用を軽減させる目的で開発されました。
非定型抗精神病薬はドパミンだけでなくセロトニン神経など様々受容体に作用することで、陰性症状や錐体外路症状などの副作用を少なくしています。
ドパミンの放出はセロトニンが調節しています。セロトニンがドパミン神経前シナプスの細胞にあるセロトニン受容体に結合すると、ドパミンの放出にブレーキがかかります。
精神科の薬がわかる本 第4版より
こんな感じで薬剤の分類をしっかりとおさえて、その分類の薬剤の特徴を大まかに勉強することが重要です。
大まかにおさえてから、分類の薬剤ごとの個々の特徴を少しずつ勉強していきましょう。
3.適応外処方をおさえる
病態と薬剤の分類をおさえたら、最後に適応外処方について勉強しましょう。
適応外処方は本来の薬剤の使い方とは違うため、流れをおさえて勉強しないと混乱する恐れがあります。
実際僕もいきなり精神科で働いて、理由を読んでも詳しく理解ができませんでした。
こうなる理由は実は病態の知識がないことが原因であることが多いので、はじめに病態をおさえることが重要です。
また、適応外処方の勉強の仕方でおすすめの方法は2つです。
- 診療ガイドラインでの勉強
- 書籍による勉強
適応外処方の勉強の仕方①:診療ガイドラインでの勉強
診療ガイドラインはネット上で検索することで無料で読める場合が多いので便利です。
こと精神科においては診療ガイドラインを読むことで適応外処方がわかる場合があるのでぜひ活用してみてください。
こんな感じで適応外処方についてやエビデンスについて書いてあるので勉強するときに重要です。
※今回紹介で載せていますが、統合失調症では適応外処方はエビデンス的に推奨されない場合が多い。
薬剤師としての勉強法を詳しく知りたい方はこちらの記事も参考に。
適応外処方の勉強の仕方②:書籍による勉強
また詳しく学習したい方には書籍による勉強もおすすめしています。
書籍ではより専門的な知識を学ぶこともできるので一度は自分の領域を学ぶ際に使ってみてください。
ただ書籍は種類も多く「どれが参考になるか分からない!?」と陥りやすいです。
そんなときは、先輩や周りの薬剤師がためになったと思っている書籍を読んでみましょう。
また実際に大型書店に置いてある本を自分で目星をつけることも参考になります。
- 大型書店などで実際に目を通してみる
- 先輩や周りの薬剤師の読んだ書籍を参考にする
- SNSなどで参考になる情報を探してみる
僕自身が精神科を勉強する時に参考になった本は、以下の記事で紹介しています。
まとめ:精神科の勉強をするなら流れが重要!すぐにはじめてみよう
まずはその疾患がなぜ起こっているのか?どういった神経伝達物質が変化しているのかをおさえましょう。
精神疾患の特徴をおさえてからはじめて薬の勉強をすると理解しやすいです。
理由は後ほど詳しく解説します。
最後に適応外処方をおさえましょう。適応外処方はガイドラインや書籍で勉強できます。
以上が精神科領域の勉強をするときに個人的におすすめの方法です。
精神科の薬剤知識や適応外処方などの勉強は、まず病態をおさえてから始めることでより理解が深まると思います。
今回の内容を参考に精神科の勉強をすぐにでもはじめてみてください。
行動が大事ですよ♪
この記事が精神科領域の勉強の参考になれば幸いです。
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